当事者の声(国内)

厚生労働省の統計によると、令和5年に児童相談所が把握した虐待の主な加害者は実母が48.7%、実父が42.3%となっています。父親による虐待が多いというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実父母間に大きな偏りはありません。今回は制度に阻まれながらも、母親による虐待から子を守り、救おうと努力する父親の話を聞きました。

主な虐待者の構成割合
(アイタイムズジャパン作成)


出典:令和5年度福祉行政報告例(児童福祉関係の一部)の概況|厚生労働省 結果の概要

アイタイムズ編集部

「パパのせいにしたらいいよ」 父と娘の小さな作戦

兵庫県に住む中村さん(仮名・40代)が、娘と小さな「作戦」を立てたときの話。
小学校低学年の娘がある日、震えながら中村さんのところへ来た。
「どうしようパパ」
「コップ割っちゃった」
妻が100円ショップで買ったコップだった。それを知れば激怒されることを娘は分かっていた。中村さんは娘に聞いた。
「どうすればいいと思う?」
娘はしばらく考えたあと小さく言った。
「正直に言う?……」
「ダメだ。叩かれるぅ」
そこで中村さんは言った。
「パパのせいにしたらいいよ」
娘は目を丸くした。
「え?いいの?」
「うん、いいよ」
妻が帰宅した後、中村さんは自分がコップを割ったと説明し土下座をしたが、妻は激怒した。
「同じもの買ってこいよ!」
その横で娘は笑顔で言った。
「私、パパが割るところ見てた」
娘の安心した顔を見て中村さんも笑顔になった。

週末の家族の時間

週末になると、父母、娘、息子の家族4人で出かけることが多かった。近くの店に立ち寄り、帰り道にスーパーで買い物をする。子どもたちの好きなカレーの材料や飲み物を買う。そんな時間が何気ない幸せだった。妻も、機嫌が良いときはある。娘は小学生高学年になっても父と手をつないで歩いた。ある日その姿を学校の担任に見られたことで、中村さんは恥ずかしい思いをしていないか心配したが、娘はまったく気にしていない様子だった。

奥さんの話がかみ合いません

父親と離れたくないと泣く子ども達を見て、警察官は父親が加害者ではないことに気が付いた。
イメージ画像:父親にしがみつく子どもの手

ある日、警察が自宅に来たことがあった。発端はゲームをやめない子供たちに妻が激高したことだった。腕力に自信のある妻が娘と息子を感情のままに殴ろうとしたため、中村さんは慌てて間に入り、子どもたちを抱きしめた。それでも妻は横から殴り始め、子ども達が悲鳴を上げた。中村さんは妻の手首をつかんで止めた。「やめろ!虐待だぞ!」そう叫ぶと妻は彼の手を振り払い、「DVで訴えてやる!」と言い残して家を飛び出した。

約1時間後、突然警察官が家に入ってきた。子どもたちはパパが逮捕されると思ったのか、中村さんにしがみついて泣いた。「パパから離れたくない」「ママ怖い」。その様子を見た警察官は、腰の警棒に手をかけながら小さく言った。「これは……違う……」。事情を聞いたあと、警察官はこう続けた。「奥さんの話がかみ合いません」。そして、中村さんにこっそりこう助言した。「自宅に監視カメラを置くことをお勧めします」。中村さんはその言葉を受けて後日監視カメラを設置した。当時は離婚を考えていたわけでもなく、録画データはほぼ2年分見返していなかった。

娘が父を守った日

数か月後、再び警察沙汰になった。この時中村さんは妻の暴力に抵抗、反論し、腕を掴んで制止した。そして妻は再び警察を呼んだ。家族全員が警察署へ行くことになり、それぞれ別の部屋で事情を聞かれた。そのときのことを、娘が中村さんに話してくれた。「警察に聞かれたの、パパが暴力ふるったかって」「わたし、パパが守ってくれたって言った」。中村さんは、それを聞いたとき、娘の成長を感じ胸が詰まったという。「でも、ママにはそれがばれて」「裏切者って言われた」。中村さんは、黙って娘を抱きしめた。その勇気と優しさに言葉が出なかったからだ。

叩くなよぉ

妻の暴力は娘に対して強く向かうことが多く、その行動は監視カメラにも映っていた。ある日、中村さんが出勤した後のことだった。娘が食事を食べるのが遅いと妻は怒り始め、娘に食器洗いを命じた。

「お前が食べるのが遅いからだ」
「お前が洗え」

娘は小さな声で答えた。

「わかったよ……」

娘が茶碗を洗い始めたときだった。突然、妻が娘の頭を殴った。

母親に殴られ、泣きながら洗い物を続ける娘は誰にも助けを求める事ができなかった。
イメージ画像:洗い物をする女の子

「ゴン!」

監視カメラでもしっかり聞き取れる鈍い音が響いた。娘は泣きながら言った。

「叩くなよぉ……」

「あんたなんか私の子じゃない!」
「頭割れて死ねばいい」

娘は暴力と暴言に耐え、泣きながら茶碗を洗い続けていた。

娘に知らされた引っ越し

この続きを見るには
続き: 2,403 文字 / 2 画像

サブスクリプション