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特集:書評
ジャーナリストの書評コーナー
親子断絶を経験したジャーナリスト、西牟田靖が自らの体験や取材を通じて出会った良書を紹介するコーナーです。
📖 書籍情報
タイトル:パパのラブレター 子供たちと離れて暮らすパパの日記
著者 :佐藤 ミツアキ
出版社:リトル・ガリヴァー社
発行年:2010年
西牟田 靖
本書は、ある日突然、最愛の子供たちと離れて暮らすことになってしまった父親の、赤裸々で愛情深い記録である。親の離婚という人生の大きな試練の中で、親子の絆とは何か、そして親として、一人の人間としてどう生きていくべきかを深く問いかける一冊となっている。本稿では、本書の魅力とメッセージを5つの視点から紐解いていく。
どんな本か
本書『パパのラブレター 子供たちと離れて暮らすパパの日記』は、著者が離婚により離れて暮らすことになった2人の息子たちのために、父親として何ができるかを考えながら書き綴ったブログをベースに出版されたものである。約9年間におよぶ、子供たちの成長と父子の交流の記録が、温かい眼差しとともに描かれている。
タイトルが示す通り、本書は決してただの悲しい別離の記録ではない。2カ月に1度という限られた面会時間の中で、いかにして子供たちに愛情を伝え、父親としての責任を全うするかという、真摯な試行錯誤の日々が綴られている。また、子供に向けたメッセージだけでなく、離婚問題で悩むすべての父親、母親に向けたエールや教訓が随所に散りばめられており、親子のあり方や夫婦のあり方を考え直すきっかけを与えてくれる実用的なエッセイとしての側面も併せ持っている。
この著者の足跡
著者の佐藤ミツアキ氏は1966年生まれ、立命館大学文学部を卒業後、ビジネスの世界で華々しい経歴を歩んできた人物である。新卒で入社した株式会社USENではトップセールスマンとして活躍し、その後、日本生命保険相互会社へと転じ、企業のリスクヘッジに関する専門的な知識を習得した。2006年には、広告代理店である株式会社グッドアドバイスと佐藤ミツアキのコンサルティングを設立し、代表取締役に就任している。彼のビジネスの才覚はメディアからも注目され、弁護士の無料検索サイトの運営などで多数のメディアから取材を受けている。関西テレビ「スーパーニュースアンカー」や朝日放送「とびだせ!夕刊探検隊」といったテレビ番組にも出演し、ラジオのパーソナリティとしても活動するなど、幅広い分野で活躍を見せている。しかし、彼の足跡の中で最も特筆すべきは、自身の辛い離婚経験を昇華し、社会貢献活動へと結びつけている点である。企業のコンサルティング業務の傍ら、夫婦関係の修復や離婚に関するカウンセリングを、営利目的ではなく無償で行っているのだ。本書出版時点で8000人以上もの相談に乗ってきたという実績は、彼が自身の痛みを他者の救済へと変えた証である。ビジネスマンとしての論理的思考と、痛みを伴う実体験から得た深い共感力が、彼のアドバイス、そして本書の言葉に圧倒的な説得力をもたらしている。

イメージ画像:ネクタイを整える営業マン
この著者が子と離ればなれになった経緯
著者が最愛の子供たちと離れることになった発端は、2001年9月11日、あのニューヨーク同時多発テロの映像をテレビで見ている時に起きた、些細な夫婦喧嘩だった。何が原因だったのか今となっては思い出せないほど些細なことだったが、お互いに意地を張り合い、事態は思わぬ方向へと転がっていく。
喧嘩から2週間後のこと、著者が仕事を終えて夜遅く帰宅すると、家の中には誰もおらず、3歳の長男と1歳半の次男の姿も消えていた。著者の知らないところで、妻が子供たちを連れて東京の実家へ帰ってしまったのである。置き手紙すら残されておらず、著者の目の前は真っ暗になった。妻からは、著者が実家に迎えに来て両親に頭を下げてくれればという一縷の望みがあったようだが、当時の著者は実家へ向かう勇気が出ず、何も言わずに帰った妻への腹立ちの方が勝ってしまったという。

