コラム:日本とドイツ

ヘフェリン・サンドラ

ドイツ人男性Aさんの話です。Aさんは30年間、日本に住んでいました。そして日本人女性のB子さんと結婚。Aさん曰く、その後「双方の仕事が激務だったこともあり、互いを思いやる余裕がなくなり喧嘩が絶えなくなった」と言います。そして、そのまま離婚。

幸か不幸か日本では夫婦の双方が離婚に同意している場合、離婚届を役所に提出することで、簡単に離婚ができます。日本で「円満離婚」は「紙切れを1枚役所の窓口に提出すること」で、いわば完了するのです。

ドイツ人男性Aさんと日本人女性のB子さんは別れる際にお金のことで揉めることもなく、いってみれば「円満離婚」でした。離婚後にAさんは共通の友達や知人を介して、B子さんの近況を聞くことはあったものの、特に接点はありませんでした。Aさんは離婚後は更に仕事に励み、相変わらずの激務だったといいます。

数年後、Aさんは勤務していた会社から「ドイツの本社で働かないか」とオファーを受け、承諾。長年いた日本を後にし、故郷ドイツへ帰りました。そこでもまた仕事に励む日々だったといいます。

ドイツで数年が過ぎたところで、Aさんに心の変化が訪れました。新たな出会いがあったのです。育った場所も近所、趣味も同じのドイツ人女性Mさんです。真剣に交際をし、やがて二人は結婚を決意。

再婚の準備を進める中で、Aさんがドイツの役所に日本の離婚受理証明書およびドイツ語の翻訳を提示したところ、役所からこう聞かれました。「日本での離婚は裁判所を通さなかったのですか?」

Aさんが「裁判所は通していません。円満な離婚でしたから、日本の役所で簡単に離婚できました」と答えたところ、ドイツの役所の人は強い口調でこう言ったそうです。「たとえ円満な離婚であっても、裁判所を通さない離婚はドイツでは認められません。日本の離婚受理証明書とドイツ語の翻訳だけではドイツで正式に離婚したことにはなりません」―――これを聞いて、Aさんは一瞬頭の中が真っ白になったといいます。

どんなに円満な離婚であっても、裁判所を通さなければならないドイツ

ドイツではどんなに円満な離婚であっても、必ず裁判所を通さなければいけません。その際、夫と妻の双方がそれぞれ弁護士をたてます。つまり離婚は必ず弁護士を通して行わなければいけないのです。もし夫も妻も離婚に同意し、金銭的なことや離婚後の子供の養育などについて合意し、特に懸案事項がない場合、「共同の弁護士1名」でも可能ですが、何らかの齟齬が生じている場合は「夫婦それぞれが弁護士を立てる」のが一般的です。そこに日本との大きな違いがあります。

Aさんはこう言いました。「仕事の忙しさにかまけて、日本流のやり方で離婚が成立していれば、それでいいと思ってしまった。本当は日本にいる間にドイツ大使館に問い合わせをすべきだった」と。

再婚という喜ばしいイベントを前に、「過去の離婚に関する様々な書類を手配する」という作業に追われてしまったAさん。その過程で元妻のB子さんとも連絡を取らなければいけなかったといいます。「我々は円満離婚だったから、連絡をしても普通に話せたからよかったけど、僕が「ドイツで離婚が正式に認められていないみたい」と言うと元妻もビックリしたみたい。電話で一瞬絶句していたよ」とに苦笑いをするAさん。そして、こう続けます。「僕たちには子供がいなかったけど、もしも子供がいたら、手続きはさらに複雑だったんじゃないかな。子供を巻き込まずに済んでよかったよ」とあくまでもポジティブ思考のAさんなのでした。

ドイツのミュンヘン裁判所。離婚は離婚でもこんなに違う。アイタイムズジャパン記事内。

イメージ画像:ドイツのミュンヘン裁判所

離婚時に「子供の今後」について、計画内容を文書にし裁判所に提出

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