コラム:支援の現場

綿谷 翔

事件に巻き込まれたとき「弁護士選び」をどうすればいいのか?

離婚、親権、養育費、面会交流──。家族や家事に関する法的問題は、ある日突然、私たちの人生に降りかかってきます。とくに緊急性が高いのが「子の連れ去り別居」による事件です。突然、相手方弁護士から連絡があったり、裁判所から調停の申し立てが起こされたことを通知されたりなど、急に法廷での手続きに巻き込まれます。その際、多くの人が最初に考えるのが「弁護士に依頼しなきゃ!」ということです。しかし、いざ弁護士を選ぼうとすると、「どうやって選べばいいのか」「何を基準にすればいいのか」と迷ってしまう方がほとんどです。

インターネットで検索すれば無数の法律事務所が出てきますが、その中から本当に信頼できる弁護士を見つけるのは至難の業です。ほとんど不可能といってもいいでしょう。ホームページには立派な経歴や実績が並んでいますが、それだけでは実際にあなたの案件にどれだけ真剣に取り組んでくれるかはわからないからです。高額な費用を払って、自分の人生を預ける存在になりますから、誰しもが弁護士選びを失敗したくないはずです。では、どうしたら弁護士選びで失敗しない可能性を高めることができるのか。ここでは、私自身の経験と、知り合いの弁護士たちからお聞きした話をもとに紹介したいと思います。

弁護士選びは、自身の闘いの結果を大きく左右するだけではありません。意外に思われるかもしれませんが、法廷闘争に関わる当事者の悩みでとくに多いのが「自分の弁護士との関係ややり取りについて」なのです。つまり、弁護士選びは、自分自身のメンタル維持にも大きな影響を与えます。「弁護士選び」をはじめ、弁護士という存在については、知っているか知っていないかで人生が変わるといっても過言ではないほど、最初に必要になる重要な知識なのです。

今回は、認定専門公認心理師として家事事件の心理支援を専門に行ってきた私自身の経験と、多くの弁護士から直接お聞きした話をもとに、「弁護士選び」の実践的なポイントをお伝えします。なかには、弁護士でも知らない、依頼者の相談を受けているからこそわかる弁護士選びのポイントもあります。表には出てこない、しかし知っているか知らないかで結果が大きく変わる極めて重要な情報ばかりですので、ぜひ最後までお読みください。

ポイントは2つ。「モチベーション」と「論理的思考力および書面作成能力」です。

弁護士のランクとは?

まず知っておいていただきたいのは、弁護士の世界にも「序列」や「ランク」のようなものが暗に存在するという事実です。これは表立って語られることは少ないのですが、弁護士業界の内側では暗黙の了解として認識されています。家事事件を専門にする弁護士は、弁護士たちのなかでは「ランクが低い」とされており、大手企業の顧問弁護士が「ランクの高い弁護士」として認識されています。これは医師の世界で「外科」の地位が高いとみなされているような状況と似ているかもしれません。決して能力の優劣を示すものではありませんし、事件の内容によっても優劣をつけるべきものではないと個人的には思うところですが、弁護士業界内での位置づけとしてこのような序列が存在しているようです。

家事事件のなかでも、遺産相続など、より大きな金銭が関わるような内容かつ事前に対応できるもの、次に交通事故などの案件が続き、最後に家事案件がくるという序列があります。あくまで弁護士が語る序列ですが、能力の高い弁護士ほど企業案件が舞い込むとされ、その能力の序列に応じて、重要な事件が依頼され、最後に残るのが家事事件などとされています。

実際、家事事件を担当する弁護士は「儲からない」と言われています。とくに子どもを「連れ去られた側」の別居親を担当する場合、裁判で勝利することも難しく、成功報酬が期待できないことから単価も低くなりがちです。つまり弁護士にとっては基本的には「割りの良くない」仕事であり、だから能力の高い人は受けない(し、専門にもしない)。大きな案件を受任できない人のところに、儲からない案件が回されていく、という理屈といえます。

こうした業界の構造を知っておくことは、後述する「弁護士選びの戦略」を理解する上でも役立ちます。なぜなら、弁護士のモチベーションや案件への取り組み方に影響を与える可能性があり、弁護士の選び方にも関わってくるからです。

家事事件に巻き込まれたとき、弁護士を選ぶ際のポイントがある。公認心理師が支援を通じて得た知見を伝授。

イメージ画像:相談を受ける弁護士

ネット選びは厳禁!大前提は人の紹介で!

弁護士選びでまず知っておくべきこと、それは「ネットで選ぶのは極めて危険」だということです。現代社会では何でもインターネットで検索して選ぶのが当たり前になっていますが、こと弁護士選びに関しては、この方法は避けるべきです。

インターネットで検索すると、立派なホームページを持つ法律事務所がたくさん出てきます。勝訴実績、得意分野、出身大学や経歴など、さまざまな情報が掲載されています。しかし、そこから選んで依頼するのは、大きなリスクを伴うのです。

なぜネット経由での依頼がダメなのか。理由は明確です。優秀な弁護士ほど多くの案件を抱えており、極めて多忙な状態にあります。そのため、あなたの案件に100%全力で取り組んでくれることは期待できません。一人の弁護士が何十件もの案件を抱えていることもあり、物理的にすべての案件に全力投球することは不可能なのです。結果、肝心の書面が片手間で作成されたり、テンプレート的な内容になってしまったりするのです。

この続きを見るには
続き: 3,714 文字

サブスクリプション