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コラム:支援の現場
綿谷 翔
前編では弁護士選びのポイントについて解説しました。後編では「弁護士との付き合い方・接し方」のポイントやコツを紹介します。
私はこれまで、家事事件に巻き込まれた多くの方々の心理支援を行ってきました。そこで見てきたのは、弁護士との関係に悩み、精神的に追い詰められていく人たちの姿です。相手方弁護士ではありません、「自分が依頼した弁護士」に苦しめられる人がものすごく多いのです。自分が依頼した弁護士に苦しめられてしまうと、法廷どころではなくなりますし、言いたいことを主張する機会さえ失います。
長い法廷闘争を乗り切るためには、弁護士の性質をよく理解し、適切な距離感を保つことが重要です。それは同時に、あなた自身の心身の状態を維持するためにも欠かせない要素であり、自身が納得いく主張を、法廷を通してしつづける「必須条件」ともなります。
本稿でとにかく覚えておいてほしいことは、「弁護士を絶対的な存在と思うと失敗する」ということです。いまなお弁護士に期待しすぎて絶望したり、頼りすぎて思った方向と違う闘いになる人が後を絶たないのが現実です。せっかく依頼した弁護士によって疲弊し、「思ったことができない」ということがないように、ぜひ弁護士の性質や付き合い方をチェックしてほしいと思います。
弁護士はどのような存在と考えるのがいいのか
なぜ弁護士を絶対視してはいけないのか。もう少し詳しくみていきましょう。
よく質問されるのですが、弁護士を入れるか入れないかでいえば、経済的に可能なのであれば「入れるべき」です。これは間違いありません。なぜなら、法廷でのやり取りというのはひと言でいえば「書面での闘争」であり、書面が作成できないと話にならないからです。
つまり、第一に押さえておくべきポイントとしては、当事者にとって弁護士の役割として最も重要な作業は、調停や裁判における「書面作成の作業だ」、ということです。いきなり法廷でのやり取りを余儀なくされた当事者にとって、自分で書面を作ろうと思うと、「①どのような書面が必要なのか、その種類や区分」「②その書面のフォーマットや基本的な書き方」「③書くときのポイントやうまい論点の見せ方」などなど、さまざまなことを学ぶ必要があります。加えて、ベースとなる文章力が必要なのは、言うまでもありません。弁護士であれば、文章力はさておき、最低限のフォーマットは誰でもわかります。
自分で書面を作成する時間や費用を捻出することなどとてもできないのが、家事事件に特徴的ともいえる「突然巻き込まれる法廷闘争」なので、費用を払うことによってその書面作成作業を代わりにやってもらう、という点が弁護士に依頼する際の主要な理由です。だから、弁護士はあくまで「アドバイザー」であり「書面作成係」という気持ちで接するくらいがうまくいくといえるでしょう。
弁護士を入れることのデメリットも当然あります。いちばん多いのは、冒頭でも紹介したように、弁護士との付き合い方が難しい、気を遣うという点です。なかには自分が依頼した弁護士からモラハラを受けたという人もいます。そのほかには、法廷に提出する主張書面に自分の意見が反映されなかったり、逆に弁護士の考えが勝手に反映されていたりすることです。ですから、「すべて弁護士先生にお任せ」というスタンスでは必ず失敗します。
弁護士はあくまで「書面作成係である」というくらいの認識を持つことが大事で、そのくらいの付き合い方がちょうどいいのです。多くの依頼者が、弁護士を「先生」として崇め、すべてを委ねてしまいがちです。しかし、それでは主体性を失い、気づいたときには自分の望まない方向に進んでいた、ということになりかねません。

