コラム:考察・視点

京都府南丹市で起きた11歳の安達結希くんの遺棄事件は痛ましい結末を迎えた。犯人として逮捕された安達優季容疑者(37歳)は、母親の再婚相手であり、戸籍上の「養父」。父親として、突然、家族になった人物によって命を奪われたとされ、多くの人が衝撃を受けている。

本事件について、多くのメディアは容疑者を単に「父親」と報じている。そのことに対し、共同親権を長くテーマにしてきたライターであり、別居親でもある私は、強い違和感がある。なぜなら、こうした呼称のすり替えこそが、ステップファミリー(継親家庭)において生じやすい、子どもの孤立リスクを社会から覆い隠していると感じるからだ。

ステップファミリーとは

再婚などによって形成される家族形態の一つ。親の再婚相手と、その連れ子など、血縁のない親子関係を含む家庭を指す。

もちろん多くのステップファミリーは、愛情を持って安定した家庭を築いているだろう。しかしその陰で、継父母や親の交際相手との関係に悩み、孤立している子どもたちの存在は、社会の中でほとんど語られてこなかった。そうした子どもたちに、社会はもっと目を向ける必要があるのではないだろうか。

本稿では、結希くんの事件を引き出しとして、

  1. データ不足が覆い隠す「ステップファミリー」の死角
  2. 実父を社会から抹殺する「代諾養子縁組制度」の恐ろしさ
  3. 「実の父親」という存在がいかに子どもの命を守るセーフティーネットとなり得るのか

について詳述する。

西牟田 靖

データ不足が覆い隠す「ステップファミリー」の死角

児童虐待のニュースが流れると、必ずと言っていいほど以下のような反論がネット上で展開される。それは、

  • 一番子どもを殺しているのは実の母親だ
  • 実親の方が虐待件数は多い

というものだ。しかし、これは統計の基本である「分母」を無視した議論である。日本では、未成年の子どもがいる世帯のうちどの程度の割合がステップファミリーに該当するのか公式統計はない。

一方、こども家庭庁の「心中以外の児童虐待死」統計では、継父母や実母の交際相手など、実親以外の養育関係者が加害者となる事例が10.8%を占めている。特に実母の交際相手が加害者となったケースが3.9%、実母と交際相手の双方のケースが2.4%、継父によるケースも1.2%ある。

この数値だけでは多いか少ないか断定できない。だが仮にステップファミリー世帯が子育て世帯全体に占める割合の10%を大きく下回るのであれば、この数値は無視できない偏りを示していることになる。ところが、日本ではその実態を示す統計が整備されていない。だからこそ実態調査をおこない、統計整備を進める必要があるのだ。

こども家庭庁による2025年(令和7年)発表資料 / 心中以外の児童虐待死の加害者の全体に対する実親以外の割合 / アイタイムズジャパン編集部作成

「立派な父親にならなければ」という強迫観念が招く密室の暴力

ではなぜこうした悲劇が繰り返されるのか。そのことについて考えてみたい。

この続きを見るには
続き: 2,995 文字 / 3 画像

サブスクリプション

この記事のみ購入

500 JPY

安達結希くん事件が浮き彫りにした「ステップファミリーの死角」と「代諾養子縁組」の危険性

記事単体での購入が可能です。

500 JPY