本コラムについて

本コラムでは、支援の現場に携わる心理師が、家事事件で多発する「疑わしい主張」に対処するためのヒントを解説します。

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綿谷 翔

対処法

前回のコラムでは家事事件においてPTSDが「交渉ツール」の1つとして悪用されるという、倫理的に反しながらも実際の現場ではよく見られるケースについて問題提起をしました。今回は、疑わしいPTSDの主張をされた場合に、ではどうやって対処していけばいいのか、ということを具体的に4つの段階に分けてご紹介いたします。これを知識としてストックしておくだけでも、いざ疑わしいPTSDを主張された際に、慌てず、冷静に1つずつ確認して反論するための足がかりとして役立つことと思います。

その4つの段階とは、以下になります。

(1)まずはPTSDの基本知識を知る。とくに診断基準を知る

(2)A基準に該当するかどうかを確認する

(3)どのような診断ツールを用いて判断したのかを確認する

(4)心理の専門家にカウンセリング相談を行う

1. PTSDとはどんな病気なのか?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命や身体の安全が脅かされるような出来事(重大事故、災害、深刻な暴力、性的被害、戦闘体験など)を経験・目撃した後に、特徴的な症状が一定期間持続する状態を指します。診断基準の1つであるDSM‑5では、まずA基準と呼ばれる体験の暴露があるかどうかを確認し、そのうえでおおまかに次の四つの症状群が、それぞれみられるかどうかによって診断していくことになります。

A基準

実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への暴露

B〜E基準

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