本コラムについて

ドイツと日本にルーツを持ち、それぞれの国で約25年暮らしてきた著者が知る、「家族観の違い」を紹介します。

ヘフェリン・サンドラ

家族というものは一見すると、どこの国でも「そう変わらない」ように映るかもしれません。人が人を好きになり、結婚に至り、子供をもうけるという流れは万国共通です。童話やおとぎ話のように「最後まで家族みんなで幸せに暮らしました」という展開に必ずしもならないのも、残念ながら万国共通です。

「結婚したら、恋愛感情を持つのは結婚相手に限る」というのが社会的なスタンダードであるのも、日本も海外も同じです。ただそれが破られた時の「反応」には国によってだいぶ違いがあります。不倫によって夫婦仲が悪くなった後の「家族のあり方」は、日本とドイツではかなり違うのです。

芸能人の不倫が叩かれる日本 その根底にある家族観とは

日本では芸能人が不倫をすると、メディアを始め、世間から叩かれることが多いです。不倫を非難する声にはファンからの「そんな(不倫をするような)人だとは思わなかった。裏切られた気分」という意見のほかに、「不倫をされた配偶者がかわいそう」という声、そして根強い意見として「子供がかわいそう」というものがあります。たとえば女優の杏と結婚していた俳優の東出昌大が若手の女優と不倫した時、夫婦に子供が3人いたことから、世間は「(お父さんが不倫をするなんて)子供がかわいそう」と大合唱でした。

日本では、たとえば夫が不倫をすると、その行為を「妻である自分のみならず、子供への裏切り」だと捉える妻が少なくありません。「外で別の女と交わった汚い夫に子供と接してもらいたくない」という妻の声を私も聞いたことがあります。その感情がエスカレートし、「不倫をする人に子供と会う権利はない」と、夫との離婚後も「子供が元夫と会う」ことを許さない女性も一部にいます。

そういう女性に対して「世界の先進国では近年、離婚後も共同親権が主流」だという話をしても、結局は「元夫の不倫が原因で離婚したのだから、元夫が全面的に悪い。元夫が子供に会えないのは自業自得」と反論されてしまうでしょう。日本では、「大人同士の恋愛沙汰」を「子供」と結び付けて考える人が多い印象です。「子供を大事に思っているのなら、不倫などしないはず」と考える日本の人は多いのです。

ドイツでは「不倫は不倫、子供は子供」

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