ジャーナリストの書評コーナー

親子断絶を経験したジャーナリストが、自らの体験や取材を通じて出会った良書を紹介するコーナーです。

西牟田 靖

書籍表紙

📖 書籍情報

タイトル:子どもが幸せになるための、別居・離婚・面会交流のすべて

著者:木附千晶・福田雅章

出版社:自由国民社

発行年:2023年

概要

この本は、子どもの権利条約に基づき、別居や離婚が子どもに与える影響を最小限に抑え、子どもの幸福を最優先する方法について論じています。親が離婚や別居に際して考慮すべきことや、子どもに必要な両親の関わり、そして子どもの成長発達権の保障に焦点を当てています。さらには、お金に関する問題、親権や監護権、面会交流といった法的側面、さまざまな離婚の形式、そして共同養育の重要性についても触れています。加えて新しい家族の形成や子どもへの伝え方についても解説しており、子どもの権利を守りながら、親が責任を持って対応することの重要性を説いています。

書評

別居や離婚を考えている、あるいはすでにその渦中にある子どもの親、特にお子さんの幸せを最優先に考えたいと願うすべての人にとって、本書は必読の一冊と断言できます。離婚の手続きや法律論の解説にとどまらず、何よりも「子どもが幸せになること」を最大のテーマとし、そのための親の心構えや具体的な行動指針を、「子どもの権利条約」という確固たる理念に基づき提示しています。

児童の権利に関する条約(通称子どもの権利条約)についての説明:文科省ホームページより抜粋

本書がまず強調するのは、両親の別居や離婚が子どもにとってどれほど大きな出来事か、という厳然たる事実についてです。それはまさに「天地が崩れ落ちる出来事」であり、その後の子どもたちの成長発達に何が必要かを忘れず、親の今の関わりが子どもの未来を左右することを肝に銘じるように促します。

そして、子どもには両親双方からの愛が必要であり、それが子どもが幸せに生きていくための「カード」となることを説いています。両親の「愛情及び理解ある雰囲気」を提供できない「仮面夫婦」の状態よりも、建設的な離婚を選ぶことの重要性にも触れています。しかし、その過程で子どもにダメージを与えないためには、離婚についてきちんと説明する、相手の悪口を言わない、子どもに責任を負わせない、これからの見通しを伝えて子どもの意見を聞く、そして何よりも父親・母親として変わりなくずっと愛していくことを伝えるといった、親の意識と努力が必要不可欠であると具体的に示唆しています。

本書の大きな特徴として特筆したいのが、日本の離婚・別居を取り巻く現状、特に司法に対する厳しい、しかし建設的な視点です。

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