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皆さんは、民法第820条をご存じでしょうか。そこには次のように書かれています。
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
つまり「子どもの親権を持つ者は、自分のためではなく、あくまで子どものために育て教育する、その権利を持ち、責任を負っている」という条文です。(「子の利益」が何を指すのかについては、解釈が分かれることもあります。)
ところが実際はどうでしょうか。離婚や別居の場面で「子の利益」が忘れ去られ、親同士の対立や思惑が優先されることが少なくありません。その渦中に居ながらも、迷わず「子どもの利益」を優先した、ある父親の話を伺いました。
専業主夫として支えた家庭
東京都に住む三崎さん(仮名)は子どもが生まれてからの数年間、専業主夫として家庭を支えていました。
「たまたま育児と家事が得意だったんです」
と笑顔で振り返ります。
妻は育児や家事が得意ではなかったため、フルタイム勤務に専念し、役割は棲み分けられていました。
息子が保育園に通う頃になると、三崎さんは休職中の訪問看護をパートで再開しましたが、育児と家事の大部分は相変わらず彼が担っていました。
「夫としては減点かもしれませんけど、パパとしては花マルだったと思うんですけどね」
その語り口には、人の心を包み込むような優しさがありました。
しかしそんな優しい三崎さんに、容赦ない試練が訪れます。

家からの追い出し
三崎さんの努力や、彼の思う「花マル」を義母は認めてはくれませんでした。
「男なら家計を支えるのが当然でしょう」
「子どもの世話ばかりせず、正社員として働きなさい」
義母は電話で繰り返しそう迫ります。
妻もまた、家事や育児が思うようにできないことに負い目を感じていたのか、義母の言葉に同調して三崎さんを責めました。
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