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ジャーナリストの書評コーナー
親子断絶を経験したジャーナリストが、自らの体験や取材を通じて出会った良書を紹介するコーナーです。
西牟田 靖
📖 書籍情報
タイトル:離婚毒・片親疎外という児童虐待
著者 :R.A.ウォーシャック(翻訳・青木聡)
出版社:誠信社
発行年:2012年
概要
<児童虐待としての「片親疎外」を看破し、親子関係を取り戻す意味を説く!>
離婚後の片親疎外を児童虐待として位置づけ、そのメカニズムと対策を詳述した、別居親の味方となる著。同居親の悪口や態度が子どもに別居親を拒否させるプロセスを分析した上で、悪口、子どもの反応、有害動機、現実改変、救済策、手放す選択と章ごとに事例で解説する。面会交流(現 親子交流)の重要性についても語っている。別居親や専門家必読である。
書評
本書は、離婚後の親子関係に潜む最も深刻で、しばしば見過ごされてきた問題、すなわち「片親疎外」を、明確に「児童虐待」として捉え直すことを目指した専門書である。片親疎外とは、一方の親(多くは同居親)からもたらされる言葉や態度といった「毒」により、他方の親(別居親)との関係性を断とうとする子どもの反応を指している。著者は臨床心理学者であり、アメリカの家族法改革に関するホワイトハウスの顧問も務めた、片親疎外研究における世界的権威である。
そんな本書の大まかな目的は、次の二つ。
1.病的な片親疎外という悲劇的事態そのものを、「虐待的な父親が監護権を勝ち取るためにでっちあげた単なる作り話」として退ける批判者たちを問題視すること。

思い込みを持つ人
2.「片親疎外という児童虐待」の破壊的なプロセスを阻止し、健全な親子の絆を結び直す方法を具体的に提示すること。
日本においては、単独親権制度の影響もあり、離婚後、非監護親(別居親)に会うのは子どもにとって悪影響だと考える風潮が少なくない。「子どもが『会いたくない』と言えば会わせなくてもよい」「『会いたい』と言ったら会わせる」という考え方が一般に浸透しているのではないだろうか。
子ども自身も「自分の意思で(別居親に)会わなかった」と思っていることも多いが、実はこれこそが「離婚毒」であり、その背景には子どもの成長にとって非常に深刻な「片親疎外」が潜んでいる。そのことがだんだんと知られるようになったのはこうした専門書があるからだ。


