ジャーナリストの書評コーナー

ジャーナリストが選んだ良書を紹介するコーナー。
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西牟田 靖

「実子誘拐ビジネスの闇」(飛鳥新社/2021) 池田良子

目次
第一章 世にもおそろしい実子誘拐の真実
第二章 父親への集団リンチと人格破壊
第三章 ハーグ条約を“殺した” 人権派弁護士
第四章 「片親疎外」という児童洗脳
第五章 家族を壊す日弁連という危険分子
第六章 DVシェルターという名の拉致監禁施設
第七章 “敵”がたくらむ全体主義社会

日本の離婚における親権争いを食い物にする悪しき構造を赤裸々に記す告発の書。元総務官僚の渡辺泰之氏(現・日本維新の会)の情報を元に構成されている。「連れ去り」は罪に問われず、「連れ戻し」は未成年者略取誘拐罪に該当するという不合理な司法判断を悪用し、「人権派弁護士」たちが、一方の親に連れ去りを教唆し、他方の親をDV加害者などに仕立て上げ、親権を獲得させ、養育費から成功報酬を得る――という実子誘拐ビジネスのカラクリ、裁判所や日弁連、法務省の癒着などの問題点を浮き彫りにしている。実子誘拐という刺激的な言葉を広めた書でもある。

本書「実子誘拐ビジネスの闇」は、日本の離婚や親権を巡る制度に深く根付いた実子誘拐問題の実態、そしてそれを助長するビジネスモデルの存在を告発する衝撃的なノンフィクションである。これまで看過されてきた日本の司法の暗部を白日の下に晒し、社会に警鐘を鳴らす一冊と言えるだろう。

本書がまず読者に突きつけるのは、「連れ去った者勝ち」と揶揄される日本の特異な法制度である。

日本では夫婦の一方が他方の同意なく子供を連れ去る行為(実子誘拐)が罪に問われることは稀であり、むしろ連れ去られた子供を親権のない側の親が連れ戻そうとすると、未成年者略取誘拐罪に問われる可能性があるという不条理な現状。この状況を生み出したとされるのが、2005年の最高裁判決であり、これが「先に連れ去ったもの勝ち」という、子供の福祉を置き去りにした結果を招いていると強く批判する。

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