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ジャーナリストの書評コーナー
ジャーナリストが選んだ良書を紹介するコーナー。
当事者としての体験や現場取材の中で見えてきた課題を重視する、アイタイムズならではの視点でお届けします。
西牟田 靖
「離婚で壊れる子どもたち~心理臨床家からの警告 棚瀬一代」(光文社新書 2010年)
「子どもを取り込む母親たち、姿を消す父親たち――。三組に一組が離婚に至る現在、乳幼児を抱えての離婚も急増している。両親の葛藤や子の奪い合いに巻き込まれた子どもたちは何に苦しみどう発達していくのか。その現状と解決策。」(本書の帯より)
著者である棚瀬一代氏は、心理臨床家。離婚し片方の親と引き離された子どもたちについて長年研究し、共同親権・共同養育の大切さを訴えてきた方。日本の共同親権・共同養育推進を主張する人たちの理論的支柱として、活躍されてきた方だ。そんな棚瀬さんの主著がこの本である。残念ながら2014年に早逝されたが、彼女の主著である本書は、10年以上経った今も、当事者を中心に読み継がれている。

本書の内容をひと言で表すと、「離婚と子ども: 最善の利益のために」となるだろうか。以下、本書の内容をかいつまんで説明する。
この本は、離婚が子供に与える影響と、離婚後の子供の福祉について深く掘り下げた内容であり、日本の現状に対する問題提起と改善策を提示している。離婚後の共同養育の重要性を強調し、日本の単独親権制度の限界を指摘しているという点を特筆したい。
離婚は子供にとって大きなトラウマになり得るという視点から、子供の視点に立って考えることの重要性を説いている。具体的には、以下のような点が指摘される。
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