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─ 著者紹介 ─
主に近畿圏で35年以上教育業界に携わり、多くの親子と向き合ってきた経験を持つライター・青山克彦が、現場での経験を基に、親子関係に起きる問題を考察し、その向き合い方をアドバイスする。
青山 克彦
- 1. なぜ親子の会話は消えるのか。小さなすれ違いの積み重ね
- 1.1. 大きなできごとよりも、小さなすれ違いの積み重ねが関係を変えていく
- 1.2. 「話さない」のではなく、「話せなくなる」状態が生まれていく
- 2. 会話が消える家庭で起きている3つの変化
- 2.1. 1. 否定される不安から、本音を隠すようになる
- 2.2. 2. 話しても分かってもらえないというあきらめが生まれる
- 2.3. 3. 家の中にいても、心が休まらなくなる
- 3. 親が悪い、子が悪いでは片づけられない理由
- 3.1. 親にも親なりの不安や必死さがある
- 3.2. 子どもにも言葉にできない苦しさがある
- 3.3. 近い関係だからこそ、感情がぶつかりやすい
- 4. 親子の会話が減っていく家庭に共通するもの
- 4.1. 正しさを伝えることが目的になっている
- 4.2. 親の心配が、子どもには監視や支配に見えてしまう
- 4.3. 子どもの変化を、結果だけで判断してしまう
- 5. 会話が消え始めたときに見直したいこと
- 5.1. すぐに正そうとせず、まず最後まで聞く
- 5.2. 詮索よりも、安心できる空気をつくる
- 5.3. 一度で分かり合おうとしない
- 6. 親子関係は、会話の量より「安心して話せる感覚」が大切
- 6.1. 毎日たくさん話すことが正解ではない
- 6.2. 短いやりとりでも、信頼は積み重ねられる
- 6.3. 会話が減った今が、関係を見直すきっかけになる
- 7. まとめ
以前は、何気なく交わしていた会話があったのに、 気づけば必要な連絡だけになっている。同じ家にいるのに、どこか距離を感じる。そんな違和感を抱えたまま、時間だけが過ぎていく。そんな家庭になっていませんか?
親子の関係が壊れるとき、 大きなできごとが原因であるとは限りません。むしろ多いのは、小さなすれ違いが少しずつ積み重なり、お互いが 「話さない」のではなく「話せなくなる」状態に変わっていくことです。この記事では、「会話が消えていく家庭で起きている変化」と「 関係が壊れる前に見直したいポイント」を整理します。
なぜ親子の会話は消えるのか。小さなすれ違いの積み重ね
大きなできごとよりも、小さなすれ違いの積み重ねが関係を変えていく
親子関係が悪くなると聞くと、「何か決定的な大きなできごとがあった」のではないかと思われがちです。しかし、実際には、日常の中にある小さなすれ違いが積み重なることで、関係性は静かに変わっていきます。「今日は学校どうやった?」という質問に「別に普通」と返ってくるような、そんな状態が繰り返されるのです。さらに少し踏み込んだ話をすると、距離を感じることさえあると思います。そうした違和感が重なると親子ともども、「もうこれ以上は話さない方がいいのではないか」という感覚になります。
「話さない」のではなく、「話せなくなる」状態が生まれていく

イメージ画像:そっぽを向く親子
会話が消える家庭で起きている3つの変化
1. 否定される不安から、本音を隠すようになる
がんばって、自分の気持ちを話したときに、否定されたと感じる経験が続くと、人は本音を出さなくなります。たとえ相手に悪気がなくても、「そんなこと考えてどうするの」「またそんなことを言って」といった言葉が重なると、安心して話せなくなります。その結果、当たり障りのない会話だけが残り、大切なことほど話されなくなっていきます。
2. 話しても分かってもらえないというあきらめが生まれる
何度、話しても伝わらないと、子どもの中に「この人には伝わらない」というあきらめが生まれます。このあきらめは、怒りよりもずっと厄介です。怒りはまだ関係を変えようとするエネルギーを持っていますが、あきらめはそのエネルギーそのものを手放してしまいます。あきらめた子どもは反抗もせず、表面上は穏やかに見えることさえあります。しかし、その静けさは、関係をあきらめた後の静けさです。
3. 家の中にいても、心が休まらなくなる
家は本来、最も安心できる場所です。しかし会話が消えた家庭では、その安心感が少しずつ失われていきます。何を言っても否定される、常に評価されているような感覚、親の顔色を読みながら過ごす緊張感。そういった空気が積み重なると、子どもは家の中にいても、気が休まらなくなります。自分の部屋に閉じこもる、学校や友人の家に長くいようとする、という子どもの変化は、その心境の表れです。
塾を長年やっていると、こんなケースに出会うことがあります。塾のない日なのに「塾に行く」と言って出かけ、実際は友達の家にいる。家にいたくないから、塾という「言い訳」を使うのです。問題は塾ではありません。家が休める場所でなくなっていることです。
親が悪い、子が悪いでは片づけられない理由
親にも親なりの不安や必死さがある
親が子どもに口うるさくなるのは、多くの場合、心配しているからです。将来のこと、学校のこと、友人関係のこと。その不安が「ちゃんとしなさい」「もっとがんばりなさい」という言葉になります。親の側から見れば、愛情から出た言葉のつもりです。しかしその必死さが、子どもには圧力として伝わってしまうことがあります。親の不安や必死という気持ちをそのまま子どもにぶつけてはいけません。
子どもにも言葉にできない苦しさがある
子どもの側にも、うまく言葉にできない苦しさがあります。「なんとなくつらい」「どう説明すればいいかわからない」という感覚は、大人が思う以上に子どもを追い詰めます。気持ちをうまく言語化できないまま黙っていると、親には「反抗している」「無視している」と映ります。しかし子どもにとっては、黙ることが唯一の自己表現だったりします。言葉にならない苦しさを抱えた子どもの沈黙を、反抗と決めつけないことが大切です。

