コラム:考察・視点


青山 克彦

「子どもと、もう何年も話していないんです」

塾の保護者面談で、ふとそう打ち明けられることがあります。きっかけを尋ねても、多くの方は言葉に詰まります。大きな喧嘩があったわけでもない。決定的な出来事があったわけでもない。ただ、気がついたら連絡が途絶え、戻り方がわからなくなっていた。そう語る方が多いのです。

親子のすれちがいは、ある日突然起きるものではありません。会話が減る、相談がなくなる、本音を言わなくなる。その小さな変化の積み重ねが、やがて「もう関わりたくない」という距離につながっていきます。断絶を防ぐためには、子どもを説得する前に、親が関係の変化に気づく必要があります。気づいた時点で打てる手は必ずあります。

この記事では、私が現場で見てきた事例も交えながら、断絶を防ぐために親が持っておきたい視点をお伝えします。

親子関係は、いきなり壊れるわけではない

返事はあるのに、本音がなくなる

関係が悪化する前段階で、まず起きるのは「会話の質の変化」です。連絡が完全に途絶えるわけではありません。LINEには返事が来ますし、電話にも出てくれます。盆や正月には顔も見せてくれます。表面的には、何も問題ないように見えます。

しかし、よく考えてみると、会話の中身が変わっています。仕事の話、悩みごと、将来のことなど。そうした「本音の領域」が、いつの間にか会話から消えているのです。返ってくるのは、当たり障りのない近況報告だけ。質問しても「まあ、ぼちぼちやっているよ」で終わる。以前は話してくれていたはずのことが、何も出てこなくなります。

このとき、子どもは親との関係を切ろうとしているわけではありません。ただ、本音を出すことを諦めているのです。

親が気づくころには、子どもは何度も諦めている

ここで難しいのは、親がこの変化になかなか気づいていないということです。

「今日も連絡があった」「元気そうだった」と思っているうちに、子どもの中では「もう話してもむだだ」という諦めが、知らず知らずのうちに積み重なっています。

子どもが本音を話さなくなるまでには、たいてい何度かのきっかけがあります。話してみたけれど否定された、相談したのに自分の意見を押しつけられた、打ち明けたら心配のあまり過剰に反応された。そのたびに、子どもは少しずつ「次は話さないでおこう」と思うようになっていきます。

親が「最近、距離を感じる」と気づいた時点で、すでに子どもはもう扉を閉めた後なのです。これを知っておくだけで、子どもへの向き合い方は変わってきます。

子どもとの距離を感じた時点で既に子供は対話の扉を閉めた後かもしれない。子どもへの向き合い方を変えて関係を取り戻すには?

イメージ画像:そっぽを向く子

すれちがいを深めるのは、大きな事件だけではない

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